Pillar guide · 税務
韓国フリーランス・1 人開発者の税務ガイド
韓国でフリーランス・1 人開発者として活動する人向けの実践税務ガイド。簡易課税 vs 一般課税、VAT、総合所得税、見落としがちな経費、健康保険料対策まで自分の経験ベースでまとめています。
GRAXEL 創業者・一人開発者 · 最終更新
韓国フリーランス・1人開発者の税務ガイド — 事業者登録から確定申告まで
こんにちは、韓国を拠点にGRAXELを運営している1人開発者です。韓国で会社員としての生活を辞め、独立してフリーランスや個人事業主としての道を歩み始めたとき、多くの人が直面する最大の壁。それが「税金」と「4大保険」です。私自身、独立した初年度の終わりにとんでもない「税金ショック」を経験しました。
売上が少しずつ上がり、サービスが成長していく喜びも束の間。翌年の5月、総合所得税の申告画面に表示された予想納税額を見て、私は文字通りPCの前でフリーズしました。「え、こんなに税金で持っていかれるの?」と。さらに追い討ちをかけるように、11月には国民健康保険料がこれまでの数倍に跳ね上がった請求書が届きました。事前に税務の知識が全くなかった私は、経費処理の準備を怠っており、本来払わなくてもよかったはずの税金を多額に納めることになってしまったのです。
この記事では、私のような失敗をする人を1人でも減らすために、在韓日本人や外国人居住者が韓国でフリーランス・1人事業者として活動する上で必須となる「税務の基本サイクルと節税のリアルなノウハウ」を、私の実体験を交えながら徹底的に解説します。
事業者登録の第一歩:簡易課税 vs 一般課税
韓国で継続的に事業所得を得る場合、税務署に事業者登録(事業用登録証の発行)を行う必要があります。ここで最初に迫られる選択が、「簡易課税者(간이과세자)」になるか、「一般課税者(일반과세자)」になるかです。
結論から言うと、初年度で売上が8,000万ウォンを超えない見込みであれば、基本的には簡易課税者を選択する方が付加価値税(VAT)の負担が圧倒的に少なくなります。簡易課税者は、業種にもよりますがVATの税率が実質的に1.5%〜4%程度と低く設定されており、毎月の事務手続きも非常にシンプルです。
ただし、1人開発者として「初期に高額なサーバー機器やPC設備を一括購入する」場合や、「主な取引先が法人であり、相手から税金計算書(セグムケサンソ)の発行を強く求められる」場合は注意が必要です。一般課税者(税率10%)であれば、初期投資で支払ったVATを全額還付(払い戻し)してもらうことが可能ですが、簡易課税者の場合はその恩恵をフルに受けることができません。私は初期コストがそこまでかからないSaaS開発だったため簡易課税からスタートし、売上が基準を超えたタイミングで自動的に一般課税に切り替わりました。このルールはホームタックス (Hometax)で詳細を確認できます。
付加価値税 (VAT) の申告:1月と7月
韓国における付加価値税の申告は、一般課税者の場合、原則として年に2回(1月と7月)行われます。(※法人の場合は年4回)。簡易課税者の場合は、年に1回(1月のみ)で済むことが多いです。
ここで重要なのは、「売上からVATを預かっている」という感覚を持つことです。売上が入金されたからといって、すべて自分の利益だと思って使ってしまうと、申告月に現金が足りず黒字倒産のような状態に陥ります。私は現在、売上が入金されるたびに、その10%を「VAT用口座」に物理的に移して絶対に手をつけないように管理しています。これはフリーランスが長く生き残るための鉄則です。
総合所得税 (5月):単純経費率 vs 基準経費率の分かれ道
韓国のフリーランスにとって、1年で最も憂鬱な月が5月です。前年1年間のすべての所得を合算して申告する「総合所得税(종합소득세)」の月だからです。
申告の際、経費の計算方法には大きく分けて「帳簿作成(記帳)」と「推計申告(経費率の適用)」があります。売上が一定規模(業種により異なるが、IT系サービス業の場合は年間2,400万ウォン未満など)であれば、「単純経費率」という魔法のような制度が使えます。これは「実際の経費証明や領収書がなくても、国が定めた高い割合(例えば60%以上)を経費として無条件で認めてあげる」という制度です。
しかし、売上が伸びて「基準経費率」の対象になると地獄を見ます。基準経費率は、認められる経費の割合が20%前後と極端に低くなります。つまり、きちんと領収書を集めて帳簿を作らなければ、売上の80%が純利益とみなされ、莫大な税金が課せられます。私はこの切り替わりのタイミングで帳簿作成を怠り、痛い目を見ました。国家統計ポータル (KOSIS)などで自分の業種コードの平均的な経費率を把握しておくこともリスク管理の一環です。
1人開発者が見落としがちな経費 5選
帳簿を作成してしっかり節税するために、私が普段から徹底して経費処理している項目を5つ紹介します。これらを取りこぼすと、利益が不当に高く計算されてしまいます。
- クラウド・API利用料: AWS、Google Cloud、OpenAIのAPI利用料など。海外決済のため韓国国内の税金計算書は発行されませんが、事業用クレジットカードの利用明細があれば経費処理が可能です。
- 機材の減価償却費: MacBook Proや外部モニターなど、高額なIT機器の購入費。購入した年に一括で経費にするのではなく、法定耐用年数に従って数年に分けて減価償却として処理します。
- 通信費: スマホの通話料や自宅のインターネット回線費用。事業用として使用している割合(按分)を計算して経費算入できます。
- ホームオフィスの家賃・光熱費: 自宅を事業場として登録している場合、仕事部屋として占有して使用している面積の割合に応じて、家賃や電気代の一部を経費として認められる場合があります。
- ソフトウェアのサブスクリプション: GitHub Copilot、JetBrains、Adobe Creative Cloud、Notionなどの月額料金。見落としがちですが、これも立派な事業用経費です。
11月の恐怖:健康保険料の急増対策
5月に総合所得税の申告を無事に終えて安心していると、半年後の11月に恐ろしい通知が届きます。それが国民健康保険公団からの保険料改定通知です。
韓国では、5月に申告した所得データが11月の健康保険料にダイレクトに反映されます。会社員時代は会社が半分負担してくれていましたが、地域加入者(フリーランス・個人事業主)になると全額自己負担となり、しかも「所得」だけでなく「財産(車や不動産など)」にも保険料が賦課されます。私は所得が上がった年の11月、健康保険料が月額で40万ウォン近く跳ね上がり、目玉が飛び出るかと思いました。
この対策として非常に有効なのが、前の記事でも紹介したノラン傘共済への加入による所得控除の活用です。所得を合法的に下げることで、連動する健康保険料の上がり幅も抑えることができます。また、もし年の途中で売上が激減したり休業したりした場合は、速やかに公団に「所得調整(減少)申請」を行うことで、保険料をリアルタイムで引き下げてもらうことが可能です。黙って待っていても勝手に下げてはくれません。
税理士(セムサ)を雇うべきタイミング
最初の1〜2年や売上が少ないうちは、ホームタックスを利用して自分で申告することも十分に可能です。しかし、売上が一般課税の基準を超え、前述の「基準経費率」の対象になったら、迷わずプロの税理士(セムサ:세무사)と「記帳代行契約(毎月一定の顧問料を払って帳簿をつけてもらう契約)」を結ぶことを強くお勧めします。
私の場合、毎月約10万ウォンの顧問料を払っていますが、それによって節約できる税金(および自分の労働時間と精神的ストレスの軽減)を考えれば、投資対効果は計り知れません。また、優秀な税理士は中小ベンチャー企業部などの政府機関が実施する、事業者向けの雇用支援金や税額控除の最新情報も教えてくれるため、事業を成長させる上で非常に心強いパートナーとなります。
まとめ
韓国でのフリーランス・1人開発者としての生活は、自由である反面、税務や行政の手続きをすべて自己責任で管理しなければならないという厳しい現実があります。しかし、ルールを理解し、適切に経費を管理すれば、決して恐れるものではありません。最初は難しく感じるかもしれませんが、一度サイクルを経験してしまえば、翌年からはずっと楽になります。
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